Top Blog

先日、浜松町の世界貿易センタービルにて、東証上場企業で中古車輸出事業を手がけるY社長と直接お会いする機会があり、地方ではなかなか聞くことのできない貴重なお話を伺いました。
現在65歳のY社長は、大学時代から「自分はサラリーマンではなく起業家になる」と心に決め、当時始めたキッチン用品の行商をきっかけにビジネスの世界に踏み出しました。26歳のとき、「ニュージーランドで勝負したい」と考え、日本でも人気の高いロブスターや天然のタイなどが豊富に獲れることに着目し、水産物輸入の貿易会社を起業されました。
その際、「20代で億、30代に10億、40代に100億、50代に1,000億の事業をつくる」という目標を掲げていたそうです。20代でこのような明確なビジョンを持ち、果敢に挑戦する若者はそう多くはないと思います。私はこの話を聞きながら、大谷翔平選手が高校時代に作成した「マンダラチャート（目標達成シート）」を思い出しました。大谷選手がそのチャートを着実に実行し、世界で活躍する選手へと成長したように、Y社長もまた、不撓不屈の精神で数々の困難を乗り越え、夢をかたちにされたのだと感じました。
起業の翌年、転機が訪れます。ニュージーランドでは当時、自動車の輸入が規制されていましたが、1989年にその規制が緩和されます。ちょうどその時期、現地でディーラーを営む友人の父親から「日本の中古車を扱いたい」と相談を受けました。当初Y社長には中古車ビジネスの知識はありませんでしたが、ニュージーランドが左側通行・右ハンドルであることから日本車の需要があると判断し、中古車の輸出に踏み切られました。
その後、Y社長は自らが先駆者となり、貿易だけでなく物流、検査、ローン販売なども含めた垂直統合型の事業モデルを構築。「安心・安全」を強みに、独自の中古車サプライチェーンを作り上げました。車両やサービスの品質が高く評価され、ニュージーランド国内で圧倒的なシェアを誇るマーケットリーダーとなっています。
「結局、1,000億円の売上達成は60代になってしまった」とおっしゃられていましたが、2024年3月期決算では売上高1,239億円を計上。さらに2025年3月期は前年の2倍以上となる3,070億円、前年比147％という爆発的な成長を遂げられています。
また、英国の経済紙『フィナンシャル・タイムズ』が発表した「アジア太平洋急成長企業ランキング」では129位にランクイン。自動車分野では堂々の第3位と、世界からも注目されています。この成長の要因は、ニュージーランドの5倍の市場規模を持つ右ハンドル国・オーストラリアへの進出でした。オーストラリアに精通した友人たちとの「人の和」を生かしたM&A戦略により、着実に市場を拡大されていったことです。
もちろん、トップの先見性やカリスマ性も重要ですが、社長一人の力には限界があります。目標を実現するためには、役員や管理職が一丸となって社員の意識を同じ方向へ導き、共感を生み出し、全員で同じ夢を共有することが不可欠だとあらためて実感しました。
Y社長は最後に、「オーストラリアで一番になったら、次はアメリカに挑戦する。そして1兆円企業を目指し、大手町に本社を構えたい」と熱く語っておられました。
「一人で見る夢はただの夢。みんなで見る夢は現実になる」——その言葉が非常に印象的でした。