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TPP(環太平洋連携協定)とコストダウン

 3月15日、安倍首相はTPP(環太平洋連携協定)交渉への正式参加を表明しました。賛成する業界と絶対反対の業界入り乱れ、自民党内でも意見の分かれるところでの表明でしたが、結局のところ参加してみなければ賛否が分からないというのが現実のようです。そして日本では賛成する自動車業界が、米国では3大自動車メーカーが反対している構図のように、各国の事情が入り乱れる交渉入りです。

 今回のTPPは、賛成している工業界より反対している農業界のほうが深刻でしょうが、その農業界の中でも賛否があるようです。ただ、「断固反対」だけでは将来が開けません。首相が新人議員だったとき、コメ自由化阻止を訴えて座り込みをしたが「これでは農業を守ることはできない」と実感したという新聞記事が目に入りました。ただ反対の声だけでは、座して死を待つことになりかねないことを事実として認識したところが今回TPP参加表明した安倍首相の出発点のようです。
 参加国の実情もありますが、関税撤廃または例外を認められる品目になっても、各国はコスト競争力をつけるために様々な取り組みをしています。乳製品の自由化の風を受けようとしているカナダの酪農者が取り組んでいる生産現場(牛舎)の映像をみましたが、機械による牛糞の処理や背中のブラシング等で人手がかからないような自動化とITを活用した搾乳の管理システムでコントダウンを進めている現状がありました。

 このような視点で建設業界を俯瞰してみると、農業界と同じような環境です。入札制度が「指名という地位を守る環境」から「総合評価という自由競争」に変革している現状でも、ただ反対! 守ってくれ!と唱えている経営者もいれば、新たな取り組みを進めている経営者もいます。変化に対して反対するだけか、変化に合わせて自分が変わろうとするのか、同じ現象に対して表か裏の対応です。どの業界でも常に環境は変化していき、これまでの生産システムに固辞するのではなく、変化に対応して根本的なコストの見直しができる業者、言わば「ピンチをチャンスにできる人」が勝ち残っていくのです。

 私たち建設業界では、コストダウンの取り組みといえば、まずは業務の協力業者や材料調達の業者を呼んで納入価格のカット要請をしますが、これは一時のコスト削減にしかなりません。いつか協力業者は耐えられなくなって逃げていくし、材料費のコスト削減には限度があります。
しかし仕事のやり方を変えること、つまりその作業のやり方を根本的に見直すことによってこれまで必要とした工数を見直すことは、一人一人の創意工夫のコストダウンが可能になります。そして結果としては、私たちと相手のWIN・WINの関係を創っていくのです。

 そして「なにをするか」ではなく「なにかをする」たとえば、自己クレーム(自分のミス)を出さないこと、自分の行動手順で時間短縮を図る、これらは現業・営業・総務事務すべての社員ができることです。まずは自分でなにかをすることです。

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